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関内イノベーションイニシアティブ株式会社 治田友香氏

シェアオフィス・コワーキングスペース「mass×mass」を運営する関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役を務める治田 友香(はるたゆか)さんにお話をお聞きしました。

起業家をサポートし、大きなオフィスへの橋渡し

――mass×massを立ち上げるきっかけを教えてください。

2010年頃の横浜市は、関内エリアのオフィスがこれから先、空きビルがどんどん増えていき、業務機能を担ってきたエリアの価値が変わっていくことを行政課題としていました。

「関内・関外地区活性化推進計画」に基づくビジネスインキュベーション拠点形成のモデル事業の提案募集があり、私たちが事業者として採択を経て、この施設を立ち上げました。

シェアワークスペースを提供し、社会起業家のインキュベーション施設を集めることを通して、新しい価値を生み出す場としての仕掛けをしていこうと考えました。集まった起業家の事業が徐々に成長・拡大して、関内エリアのオフィスに旅立って行けるような橋渡しをすることが一番の狙いでしたが、思い描いたようにならず、苦戦したところでもありました。

当時はこのエリアにいつかのシェアオフィスがありましたが、入居者同士がやりとりをしながら新しい価値を作っていくという、コワーキングスペースはそれほどありませんでした。

自由な利用の仕方で時代に合った働き方ができる施設

――現在は何社ほど入居されていますか?また、入居されている企業はどのような業種の方が多いでしょうか?

現在は80社ほどが入居しています。設立から通算で約250社にご利用いただいています。

最初は国土交通省と横浜市による補助事業で立ち上がりましたが、現在は民間運営の施設として運営しています。行政によるインキュベーション施設は入居に関して何年という限度がありますが、当社は特に期限を設けていません。なので、設立当初から入居する方も居るし、すぐ卒業していく方も居るし、様々ですね。

また入居されている方は、個人事業主から株式会社、NPO法人など法人格はさまざまです。業種で分けるとすると、ITベンチャーやIT関連の企業が2割、社会課題の解決を目的とした法人が2割、クリエイターの方、デザイナー系やコピーライター、そして最近は建築系の方も増えてきました。それらも2割くらい。コロナ禍を経て、企業として入居する方以外にも、ドロップインなどで他の企業にお勤めの方がリモート勤務をするために利用されたり、いろいろな方に集まってくださっているという感じです。

最初は、同じ業種の方が入居したら競合関係になるんじゃないかと思いましたが、実は立ち上げたばかりの人たちって結構迷うことも多々あって、同業が居ることによって相談できたり、勇気付けられることが多いみたいですね。

入居者同士で協業することもしばしば

――入居者様同士での繋がりは結構あるのでしょうか?

そうですね、繋がりは増えてきていると思います。いろいろな職種の方が入居しているので、互いに強みを出し合って、仕事を調達しようという動きや、コロナ前は食事を一緒にしたり、イベントに出かけたりと交流がありました。

私たちの方でも入居者さん同士が繋がりを持てるように、コーヒータイムを設けたり、みんなでランチしているときに「あなたは何している人?」みたいな感じで話しかけることもありますね。

もちろん、普段の皆さんの仕事ぶりを見て、あまり話しかけられたくないだろうなという方を無理に繋げようとすることなく、繋がりを持ちたい人が持てるように自然にサポートすることを心がけています。

お金だけじゃなく社会関係資本のネットワークが確立している横浜

――横浜の魅力とはなんでしょうか?

社会関係資本(ソーシャルキャピタル)でしょうか。東京都は違う、横浜の人と人、組織と組織の繋がりが魅力ではないかと常々感じています。お金も大切だけども、お金だけじゃない、近い関係での有機的なネットワークに価値があるのではないか。

例えば、昨年度から、YOKOHAMA FOOD LOVERsと、ヒューマングルメサイトを銘打ったWEBメディアを立ち上げおり、今年度は、関内を重点地区として展開する予定です。飲食店はもちろんのこと、それを支える支援者、例えば、商店街組合やまちづくり組織、金融機関、デリバリーシステムを提供するベンチャー企業、エリアマネジメントを担う開発事業者などの協力を得ての事業展開を模索しています。このエリアのお客さんと飲食店をつなぐには、ITの力を借りながらも、リアルなつながりが不可欠であり、それを実行し、成果を生み出していける環境を生かしていきたいと考えています。

YOKOHAMA FOOD LOVERs  https://media.new-port.jp/

イノベーションの可能性はもっと拡がる

――反対に、これからの横浜の課題はなんでしょうか?

一番は起業をしたい人、イノベーションを起こしたい人に対して横浜の魅力をアピールしきれていないところですね。私たちは2019から2021年度にかけて、社会課題解決のためのスクールを行い、約130名の修了生を輩出しました。修了生コミュニティができていることもあり、彼らがその後も活躍できる場を、横浜市の部署を超えて継続的につくれるかというのが課題の一つかもしれません。コミュニティの継続には相当の力を掛ける必要があります。とはいえ、横浜にはすでに魅力的な活動やコミュニティがあるので、それらとの関係性もデザインしていくことも大事な視点だと考えます。

また、私たち市民目線では、横浜市や神奈川県が連携してくださったらと思います。それによって横浜・神奈川に資金的な支援体制が整い、起業後も様々な面からサポートできる体制ができれば、イノベーションの創出の可能性は拡がることを願っています。

エコシステムの仕組みで人の循環を促進する

――今後目指していること、やりたいことを教えてください

まだまだ、領域横断的な起業人材育成や、支援人材育成がしっかりとできてないと考えています。私たちだけでは難しいですが、エコシステム的な仕組みをつくり、それに携わることで、横浜の価値をあげていく取り組みを継続していきたいです。

最近はコミュニティマネージャーの存在が注目されていますね。コミュニティマネージャーとは、コワーキングスペース、シェアオフィスやビジネスコミュニティなどを管理したり、コミュニティメンバーのマッチングサポート、コミュニティ活性化のためのイベント企画・開催や情報発信、コミュニティ内のトラブル解決など守備範囲は広いです。設立11年を経てmass×massから輩出したコミュニティマネージャーが外に出て活躍している事例が増えてきています。それはとても良い循環だと思うので、そういった方たちを引き続き送り出せるような仕掛けをつくり、それがちゃんと経済的に回るように進化させていくということにもチャレンジしていきていといと考えています。

1棚1オーナー制度のみんなが本を持ち寄り、みんなで運営する『LOCAL BOOK SOTE kita.』のスペース
関連会社であるマスマススクエアが運営。シェアオフィス利用者とは異なる属性の方々が集まり、新たなコミュニティと賑わいが生まれている。

FAVORITE SPOT

「TSUBAKI食堂」
横浜市役所内にあり、神奈川県産の食材を使用するお店。「小松菜丼」「18区丼」など地産地消にこだわっている。

「YOKOHAMA BEER」
ビール文化発祥の地である横浜で作られたクラフトビールは格別。横浜に10以上ある醸造所をめぐるビアバイクツアーもおすすめ。

治田友香 関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役
マンションデベロッパー、NPO支援組織、起業家支援財団を経て、2013年6月から現職。
関内イノベーションイニシアティブは、横浜を拠点に2010年から地域課題に取組む人や組織に向けた起業人材育成講座(修了生1000名超)、ソーシャルビジネス事業者への伴走支援やプロボノプログラムを実施。また、mass×mass関内フューチャーセンターの運営、社会目的利用促進のための不動産取引事業、クラウドファンディングや事業承継支援、エリアマネジメントに関する調査研究やコンサルティングを行い、次時代を担う街や社会のエコシステムの形成を目指している。

関内イノベーションイニシアティブ株式会社 http://kii-net.jp

mass×mass関内フューチャーセンター
2011年設立の関内イノベーションイニシアティブ株式会社が運営するシェアワークプレイス。
コワーキングスペース、シェアオフィス、オンライン配信スタジオが1つとなったコミュニティプラットフォーム。
横浜関内の中心市街地の空き室をリノベーションして、あたらしい価値を生み出す人たちが地域や社会に対してチャレンジできるきっかけを掴む場として働く場としてのワークプレイス、あたらしい気づきを得るための交流イベント、あたらしい分野へ挑戦するための学びの場など、多様なステージとレイヤーの人たちが集い、対話を通して未来を創るプロジェクトを展開中。

関内フューチャーセンター https://massmass.jp/